No.242新着 国立演芸場 隼町の300席で44年、寄席と若手の会を続けた国の演芸の劇場と、閉場3年目の今
国立演芸場は1979年3月、東京・隼町の国立劇場の敷地内に開場した300席の演芸の劇場である。定席の寄席、若手の花形演芸会、協会の垣根を越えた国立名人会を続け、2023年10月末に建て替えのため閉場した。2026年11月現在は都内の劇場やホールを借りて公演を続けており、再整備は3度目の入札の手続き中で、公式の再開場の目標は2033年度とされている。
本文と出典
あらまし
国立演芸場は、東京都千代田区隼町の国立劇場の敷地内にある、演芸のための国の劇場である。1979年3月に開場し、客席は300。運営は独立行政法人日本芸術文化振興会が担う。文化庁の広報誌は、大衆芸能の継承と振興発展をめざして開場したと説明している。
落語、講談、浪曲、漫才、太神楽などの公演を44年あまり続けたのち、2023年10月末に、国立劇場本館とともに再整備のため閉場した。2026年11月現在、演芸場の主催公演は都内のほかの劇場やホールを借りて行われている。
主なできごと
・1979年3月 開場。開館公演は「日本の寄席芸 東西芸人揃いぶみ」
・1979年11月 同じ敷地内に国立演芸資料館が設けられる(世界大百科事典)
・1997年 花形演芸大賞の大賞に柳家花緑(ウィキペディアの受賞者一覧の最初の年)
・2020年3月1日〜7月31日 新型コロナウイルス感染予防のため定席と主催公演を中止し、8月1日に再開
・2022年10月以降 公演に「初代国立演芸場さよなら公演」と銘打つ
・2023年8月 『笑点』が8月13日と20日の放送分をここで収録
・2023年10月末 国立劇場本館などとともに閉場
・2024年1月 ほかの劇場やホールでの主催公演が始まる予定とされる(ウィキペディア)
・2025年11月 政府の総合経済対策に「2033年度の再開場を目指して」と書かれる
・2026年3月31日 振興会が3度目の入札公告を出す
くわしく 隼町の舞台で何をしていたか
建物は1階が演芸資料館、2階が300席の舞台と売店である。ブリタニカ国際大百科事典は、併設の施設で明治以降の大衆芸能の資料を集めていると記す。文化庁の広報誌によれば、寄席囃子や太神楽の後継者を育てる研修室も備えていた。
公演の柱は三つあった。ウィキペディアによると、一つめは定席の寄席で、月の上席(1〜10日)と中席(11〜20日)だけを開き、ふつうの寄席にある下席(21〜30日)はない。原則は昼の部のみで、落語協会と落語芸術協会が上席と中席を分け合って出演者を出した。文化庁の広報誌は、ほかの演芸場より番数が少ないこの劇場でも、前座を除いておおむね9番の芸が続くと紹介している。
二つめは月1回の国立名人会で、出演者は協会の垣根を越えて組まれた。1月上席は新春国立名人会になる。三つめは毎月の最終週末の昼に開く花形演芸会で、出られるのは入門から20年以内の若手に限られ、落語のほかに色物も出た。
開場して間もない頃は、テレビの『花王名人劇場』の収録会場として使われることが多かったとウィキペディアは記す。閉場直前の2023年8月には『笑点』が2回分を収録し、同番組にとってここでの収録は最初で最後になった。
くわしく 花形演芸大賞と若手の会
花形演芸会の出演者の中から、毎年、大賞、金賞、銀賞が選ばれる。これが花形演芸大賞である。ウィキペディアの一覧では、1997年の大賞が柳家花緑、1998年が浪曲の国本武春、1999年が春風亭昇太である。近年は、2020年が古今亭文菊、2021年が桂小すみ、2022年が六代目神田伯山、2023年が十代目入船亭扇橋、2024年が柳家㐂三郎、2025年が上の助空五郎となっている。2002年、2008年、2016年は大賞の該当者がなかった。
落語家だけでなく、浪曲師の国本武春、講談の神田伯山、音曲の桂小すみが大賞に並ぶのは、花形演芸会に色物まで含めた若手が出ていたためである。文化庁の広報誌は、この会から寄席の看板になった人も少なくないと書いている。
賞がいつ始まったか、1996年以前にどういう名前だったかは、今回開いた資料では確かめられなかった。
くわしく 閉場の理由と、いまの公演の場
振興会の再整備のページによると、国立劇場本館と国立演芸場は、舞台の機械や空調などの老朽化が進み、修理に要る部品がもう作られていない。故障すれば動かせなくなるおそれがある。
建て替えは、当初の計画では2023年10月から工事を始め、2029年秋に再開場する予定だった。しかし、2022年4月と2023年2月に公告した入札がどちらも不調に終わった。ウィキペディアは、人件費や円安による資材の値上がりを背景に挙げている。国は2024年12月に補正予算で200億円を足して整備計画を改め、2025年9月にも日程を改めた。2025年11月の総合経済対策には2033年度の再開場をめざすと書かれ、振興会のページもこれを載せている。
2026年3月31日には3度目の入札公告が出た。公告によれば、契約は2027年12月ごろの予定で、施設の整備期間は契約の翌月から最長8年3か月である。現代ビジネスの2026年1月の記事は、振興会が引き渡しの期限を2036年3月ごろとしたと伝える。公式の目標の2033年度と、入札の条件で許される最も遅い引き渡しの時期とのあいだには、2年あまりの幅がある。
閉場中の公演は、都内の劇場やホールを借りて続いている。2026年11月の「国立演芸場寄席」は、前半が江東区深川江戸資料館小劇場(4日〜8日)、後半がすみだトリフォニーホール小ホール(16日〜20日)である。花形演芸会(11月23日)と、2027年1月2日の国立名人会は、渋谷区文化総合センター大和田の伝承ホールで開く。振興会は2026年10月、閉場から3年を迎えたことについて理事長名の文章を出したが、再開場の具体的な年月は書いていない。
くわしく 上方との関係
大阪には、同じ振興会が運営する国立文楽劇場がある。1984年3月に開場し、159席の小ホールでは奇数月に落語、漫才、浪曲などの「上方演芸特選会」が開かれる。2026年11月は18日から21日までの日程である。国立の演芸の舞台が東京では借りた会場を回っているのに対し、大阪では自前の小ホールで続いていることになる。ウィキペディアは、閉場中の公演の場として大阪の国立文楽劇場も挙げている。
なぜ受けたのか
資料から確かめられる仕組みをもとに整理すると、必要とされた理由は三つ考えられる。
一つめは、二つの協会が上席と中席を分け合い、どちらの芸人にも同じ舞台を開いたことである。番数をしぼった番組も、国の劇場だから組めた形と考えられる。
二つめは、花形演芸会で入門20年以内の若手が毎月腕を試し、そこから賞が選ばれたことである。同じ世代と並んで評価される場は、若手が名を上げるきっかけになる。
三つめは、寄席囃子や太神楽の研修室と資料館を同じ建物に置き、芸を支える人と資料を国が守る形にしたことである。
評価の分かれる点
再開場の時期は、資料によって書き方が違う。振興会のページは2033年度の目標を載せ、入札公告は最長8年3か月の整備期間を認め、現代ビジネスは2036年3月ごろという引き渡しの期限を伝える。どれが実際の開場になるかは、2027年の落札と契約を待たないと決まらない。
また、今回の再整備の入札公告が対象として挙げているのは「新しい国立劇場(仮称)」で、公告の本文に国立演芸場の名前は出てこない。新しい施設の中で演芸の舞台がどういう形になるのかは、今回開いた資料では確かめられなかった。
くらさんの考察
国立演芸場の閉場で失われたのは、建物そのものより、毎月決まった日に決まった場所で寄席が開かれるという予定の確かさだと考えられる。借りた会場では、深川、墨田、渋谷と場所が月の前後半で変わり、日数も5日ほどに縮んでいる。
一方で、花形演芸会と国立名人会の名前が閉場後も続いていることは、振興会がこの二つを看板として手放していない表れと考えられる。開場から最長で十数年空くかもしれない間に、若手の会と賞をどうつないでいくかが、再開場の日付と同じくらい問われることになるだろう。
ジージへの問いかけ
・国立演芸場の寄席は下席がなく、番数も少なめでした。民間の寄席と比べて、どちらの番組の組み方が好みでしょうか。
・『花王名人劇場』の収録が、ここで行われていたことは知っていたでしょうか。テレビで見た演芸と、劇場の客席で見る演芸の違いをどう感じますか。
・大阪の国立文楽劇場では上方の演芸を自前の小ホールで続けています。東京の演芸場が戻るまで、東西の芸人が行き来する機会は増えてほしいと思いますか。
出典
・国立演芸場(日本芸術文化振興会) https://www.ntj.jac.go.jp/engei/
・国立劇場等の再整備について(日本芸術文化振興会) https://www.ntj.jac.go.jp/topics/top/2025/saiseibi/
・国立劇場・国立演芸場閉場から3年を迎えて(日本芸術文化振興会) https://www.ntj.jac.go.jp/topics/engei/2026/national_theatre_20261026_2/
・国立演芸場 主催公演スケジュール(日本芸術文化振興会) https://www.ntj.jac.go.jp/topics/engei/2026/0312/
・国立文楽劇場(日本芸術文化振興会) https://www.ntj.jac.go.jp/bunraku/
・入札公告 国立劇場再整備等事業(ジェトロ 政府調達データベース) https://www.jetro.go.jp/gov_procurement/national/articles/386201/2026033100200000.html
・国立演芸場の紹介(文化庁 広報誌) https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/youkoso/youkoso_034.html
・国立演芸場(コトバンク) https://kotobank.jp/word/国立演芸場
・国立演芸場(ウィキペディア) https://ja.wikipedia.org/wiki/国立演芸場
・国立劇場(ウィキペディア) https://ja.wikipedia.org/wiki/国立劇場
・国立文楽劇場(ウィキペディア) https://ja.wikipedia.org/wiki/国立文楽劇場
・国立劇場の再開発延期を伝える記事(現代ビジネス、2026年1月30日) https://gendai.media/articles/-/162900
動画
・【笑点】歌丸さん、円楽さんゆかりの地で初の大喜利 昇太「とてもうれしかった」(日テレNEWSカルチャー【公式】)https://www.youtube.com/watch?v=4s6LSxEf78o
・国立演芸場さよなら公演。開演前の静けさ。また、会う日まで。(うちの師匠。TV 【十一代 桂文治youtube】)https://www.youtube.com/watch?v=Ngdx3zyEYeI
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